お守りナース「ににふに」です。
大阪・豊中と吹田で、自費(保険外)の伴走型支援と高齢者の訪問サポートをしています。
前回から少し時間が経ってしまいました。
さて、【ににふにの本棚】#02はこの本をご紹介します。
▶『えーえんとくちから』笹井宏之(ちくま文庫/2019年刊)

今回ご紹介するのは歌集です。歌集とはひとりの歌人の作品(短歌)を集めた本です。
短歌なんてこれまで興味なかったし全然知らないわ、という方も多いのではないでしょうか。わたしは30年以上詩を書いているのですが、短歌はなかなか書けないし評価が難しいと感じています。言葉の選び方の勘のようなものが違うというか・・・。けれどこの笹井氏の作品は頭で理解するという作業をせずにスッと入ってくるのです。
「えーえんとくちから」というちょっと変わったこの本のタイトル、これはいったい何でしょう。
この言葉は作品の一部分からとられています。それはこの一首です。
えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい
短歌と言えば「五・七・五・七・七」の定型でなければいけない、と思われがちですが、最近はそうでもない作品が増えてきているようです(自由律短歌といいます)。
わたしは初め「えーえんとくちから」は「永遠と口から」という意味かな、思いました。でもそうではなく、永遠解く力でした。永遠解く力を下さい、と願いを込めているのです。
笹井氏は1982年佐賀県で生まれました。10代の時に重度の身体表現性障害と診断され、寝たきりの時期もあったそうです。そんななか短歌を書き続け、2008年第一歌集『ひとさらい』を刊行し、さあこれからと思われた2009年、インフルエンザで急逝します。まだ26才でした。この本は彼の没後出版されています。
そんな彼の生涯を心に留めて作品を読むと、繊細で柔らかく、そして自分の背負った運命を受け入れる姿が浮かんできます。三首ご紹介します。
祝祭のしずかなおわり ひとはみな脆いうつわであるということ
天井と私のあいだを一本の各駅停車が往復する夜
拾ったら手紙のようで開いたらあなたのようでもう見れません
優しいまなざしのなかにふと宿る哀しみ。笹井氏の作品はどれも優しさと哀しみが混在していて、でもそれが不思議と暗さや影ではなく、透明なひかりが届けられたような明るさを感じます。
それは一首一首に「祈り」が溶け込んでいるからではないかと思うのです。
身体が思うように動かなかった分、心のかたちが作品からにじみ出ている、そんな気が強くしています。
短歌をよく知らない方でも読みやすい一冊、おすすめです。
『えーえんとくちから』笹井宏之(ちくま文庫/2019年刊)


